maggie-toto

記事一覧(4)

MONO 語り Infinity

真夜中三時半....寝付かれなさに任せて、包丁を手にする。いくつか手つかずに転がしてある紫玉葱のスライスを二個分。それをビネガーひたひたにして、ピクルスの下ごしらえ完了。黒霧島のオンザロックを左手に、亡くなった父が、その昔買ってくれた木製の折り畳みイスに腰掛ければ黒猫の一匹が、間をいれずに膝に飛び乗ってくる。ヒトの呼音葉(ことば)で語りかければ、黒猫はそれに応じて身体の総てで呼音波(ことば)を返してくる。他の猫たちも、わたしのぐるりにそれぞれの位置を構え、わたしと黒猫のやりとりに、聞くとはなしにその耳をたてている。そして、わたしは思い出す。かつて多くの呼音葉(ことば)を綴っていたことを。ひとりのモノに認められたいと切に願い乍ら多くの想い出の影を切り取っていた事を。そして琥珀に閉じ込めた『待っているよ。』の約束事を思い出し乍らそれは、あくまで、自我の溢れ出たる極みに過ぎなかった事を。微動だに出来なかった姿のままにそれは、あの瞬間に生き途絶えてしまっていた事すら気づかずに過ごして来たこの日々にようやく終止符がついたのだと溶けきった氷とともに飲み干した酒が教えてくれた。いや、『待っているよ。』と相手に束縛をかけた自分にようやくその罪の重さを感じ取れ手放しの途期を知ったのだった。